前回書いたように、ISO9001規格に書かれている内部監査の思想は筋が通ってるけど、現場の運営では建前で動いてる感が否めない。結局、経営を良くするような本質的な指摘やレポートは生まれず、指摘が出てきたとしても深みのないそもそも結論ありきの内容であったり、あるいは監査員の資質が疑われるようなレポートには事務局が書類の帳尻合わせ、と結局は審査対応のための作業に追われるだけっていう状況だった。当時の自分は、なんとかこの状況から脱却したくて、いろいろ試してみた。
内部監査を少しでも「使えるもの」にする工夫として、具体的にはこんなことをやってみた。
監査シートを改造
規格を理解しやすいように、監査シートに具体的な質問例を山ほど書き込んでおいた。これで、「何を見ればいいかわからない」っていう言い訳はできないようにしたつもり。
事前調査を徹底
監査前に監査員自身が対象部署から課題をヒアリングして、できるだけ情報を仕入れておく仕組みにした。準備ができていれば、議論が深まって監査が形式だけで終わることも少なくなるだろうと思ってね。
社内向けの講習を企画
社外講習だけじゃなく、事務局オリジナルのカスタマイズ講習を開催して、監査員に「うちの組織ならでは」のポイントをしっかり教える場を作った。
経営者を巻き込む工夫
監査結果を報告する時に、できるだけ経営課題に直結するような内容を伝えた。経営者の「他人事」感を少しでも減らしたかったんだよね。
文書で仕組みを固める
品質マニュアルや関連規程を、可能な範囲で具体的な運用に即した内容にブラッシュアップした。ISOの規格文章はその汎用性を維持するために必然的に抽象的な表現に留まっているので、普通に読んでも「で、どうするの?」って感じであることは仕方ない。なので、組織向けにわかりやすく噛み砕いた形にした。
それで結果はどうだった?
このような心がけでISO9001からTS16949(今のIATF16949)まで、少なくとも5年間は運営してみた。もちろん事務局としては規格理解は深まったし、「内部監査がちゃんと機能すれば組織は良くなる」って信念は変わらなかった。しかし、現実は厳しい。
結局内部監査は形式的な活動から抜け出せなかったし、記録さえ整ってれば第三者審査にも通るから、認証維持には問題なし。それで何が改善されたかって言うと、ほとんど何も変わらなかった。結局、指摘事項の改善も事務局が全部考えて提案して…って、何してんだろうなって感じ。
世の中の課題なのか? ここまでやっても変わらないっていうのは、自分が所属してた組織だけの話じゃない気がする。この問題、ISO9001を認証で取り入れている組織であればどこにでもあるんじゃないかという気もしてきた。
この辺りで今回は一旦止める。次回は、内部監査だけじゃなく、品質マネジメントシステム全体の運営について、自分なりの考察を展開してみようと思う。じゃ、また次回。